【考察】ガスは何故ヴィクターを○したのか

シーズン4の初回エピソード「ガスの怒り」で、いつもは冷静なガスが思いがけない行動を取ってウォルターたちを震撼させますが、ガスは一体何故こんなことをしたんでしょうか?

S4E1「ガスの怒り」盛大なネタバレおよびそれ以降のエピソードのややバレがあります。未見の方は注意!

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ウォルターを抹殺しラボの仕事をゲイルに引き継がせようと試みたガスでしたが、ウォルターの咄嗟の機転で計画は台無しに。一連の騒動のけじめとしてガスが「罰した」のは、邪魔者のウォルターでも、実行犯のジェシーでもなく、意外にも部下のヴィクターでした。

ガスは何故ヴィクターを殺したのか? 何故ヴィクターだったのか、そもそも殺す必要はあったんでしょうか?

この点について、よくわからなかった、または納得できなかった人が結構な数いたようで、今も海外サイトを検索すると「なんでガスはヴィクターを殺したの?」という質問が大量に出てきます。また、以前私が読んだある方(日本人)の感想には「脚本家が解決策に困ってとりあえず殺してみたのだろう」と書かれていました。うーん…。
確かに「うおっ、なんでそっち!?」となる展開でしたが、「とりあえず話の都合上」というような理由では決してないと思います。海外質問サイトの回答も参考にしつつ、私なりに理由をまとめてみました(長文すいません…)。

何故ヴィクターだったのか

殺す必要があったかどうかはさておき、まずどうして排除の対象がヴィクターになってしまったのか考えてみました。

ガスにとって疎ましい存在であり真っ先に排除したい人物といえばウォルターです。でもゲイルを失った今、ウォルターを失うことは即ビジネス上の大損害に繋がるので、殺すことはできません(ヴィクターがメスの製法を覚えていた点については後述)。

また、ガスが仲裁したにも関わらず約束を破って逃げた「役立たずのジャンキー」ジェシーも、ガスにとっては不要な存在です。でも、もしジェシーを殺せばウォルターが辞めてしまうことは目に見えている(実際ガスに対して「ジェシーを殺せば私は降りる」と宣言している)ので、こちらも手を出せない。

残るはマイクとヴィクターですが、ヴィクターのほうがより重大なミスを犯し、そのせいで「消えてもらったほうが好都合な存在」になってしまったようです。

そもそもの問題を解決しそこなった

マイクとヴィクターがガスに命じられたのはウォルターの殺害だったにも関わらず、あろうことか逆にゲイルを殺されてしまったため、大いにガスの不興を買うことになります。

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S3E13「向けられた銃口」より。このシーンのウォルターかっけぇぇぇ

しかも、ジェシーが実はまだアルバカーキに潜んでいたことも明らかになり、二人とも事前にそれを察知できなかったという点で二重に失敗していることに。

これらについてはマイクも責を負う立場ですが、ヴィクターはこの上さらに重大なミスを重ねてしまいます。

致命的なミス = 犯罪現場で顔を見られた

ゲイルを殺害したジェシーの姿は誰にも目撃されなかったのに、直後に駆けつけたヴィクターは近隣住人にハッキリと顔を見られてしまいました。

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しかも通報中のじいちゃんの制止を振りきって部屋に入っている

もし、殺害現場を見にきた不審人物がガスのクリーニング工場に出入りしていたと警察やDEAにバレたら?用心深いガスのこと、わずかでも自分に繋がる可能性があれば、それを排除しなければと考えたはずです。
(ガスはマイクから電話で状況報告を受けたのでヴィクターが目撃されたことも知っている)

ヴィクターがターゲットになった一番の理由はこれだと思います。

何故メスを作れるヴィクターを殺したのか

とはいえ、「なぜ製法を知っているヴィクターを殺して、邪魔者のウォルターを生かしたの?」と疑問に思った方が多いと思います(たぶん)。

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というか私も最初そう思ったんですが、よく考えてみると、ずっとウォルターと一緒に働いていたゲイルでさえ「ウォルターがいなくなると仮定してどれくらいで引き継げるか」とガスに聞かれた時に「あと数回一緒に作業すれば…」と答えているんですね(※)ゲイルでさえ「すぐにはムリ」だと思っていた。要するに、ヴィクターは自分がなにをわかっていないのかもわからないレベルなんだと思います(だからこそ堂々と「作り方は把握している」と言えた)。

※このガスとゲイルの会話はS3E13「向けられた銃口」より。結局ゲイルはガスの気迫に押されて「あと1回でなんとか…」と譲歩しました。

また、当然ながらヴィクターは化学に関するウォルターの質問に全く答えられませんでした。この質問はウォルターの苦し紛れの難癖ではありましたが、実際のところウォルターの言うとおりで、ミスに対処したり環境の変化に応じて製法を変えるような知識もないヴィクターに、ガスが満足できるレベルのものが作れるとは到底思えません。

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このエピソード冒頭の回想シーンでゲイルが言っているように、ガスは「最高を求める」人です。だからこそ調理人にはプロの化学者を雇い、最高純度のメスを売り捌いてきました。品質に無頓着であれば、そもそも当初から「手を組めば余計な心配が増える」と感じていたウォルターを雇うこともなかったはず。

さらに言えば、ヴィクターのしたことはガスに命じられたわけではない勝手な行動でいわば「出過ぎた真似」です。事件の翌朝(※)、ガスが現れた時にヴィクターは誇らしげな表情をしていますが、それを目にしたガスはむしろ不快感を露わにしています。ガスにしてみればヴィクターが調理人になるなど論外であり、ヴィクターのしたことは「売れない商品を勝手に作って材料を無駄にした」以外の何物でもないからです。

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「オレが作れますから安心してください!」と言いたげなヴィクターに…
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「あ?#」という視線を投げるガスさま

※余談ですが、ガスは後のエピソード(S4E8「ガスの過去」)でDEAに「この日は病院の慈善パーティに参加していた」と言っていて、裏も取れていることから犯行時間は実際にパーティに出席していたと思われます。パーティは10時に終わったようですが、ガスがラボに現れたのは翌朝の9時過ぎ。報告を聞いてすぐに駆け付けなかったのは、目撃される危険を避けて普段どおりに行動したためで、これもガスの慎重さを表していると思います。

…と、こんな感じでヴィクターが「排除」の対象になってしまったんじゃないかなーと思います。見返すと、当のヴィクターは直前まで自分がそんなことになるとは想像だにしておらず、全力で「ガスさん、こいつらやっちゃってくださいよ」的な態度で、もうホントかわいそう…。

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このシーン、赤と青の対比といい構図といいほんとすき

何故殺さなければならなかったのか

ただ、本当にヴィクターを殺す必要があったんでしょうか?

ヴィクターが目撃されたせいで、事件がいつガスに繋がらないとも限らない状況なのは確かで、もしそうなれば全員身の破滅です。とはいえ、ヴィクターを殺したところで目撃された事実は消えないし、逮捕を避けるためだけなら例えばどこか国外に逃がすというような選択肢もあったはず。

殺さずにすませたとしたら、どうなったか

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S4E8「ガスの過去」でガスがDEAに呼ばれた際、ヴィクターの手配ポスターが壁に掲示されている

仮にヴィクターを国外に逃がしたとして、警察やDEAがヴィクターを見つけられなければガスに辿り着く可能性もぐっと低くなります。ウォルターとジェシーは高品質のメスを作り続け(少なくとも当面は)、マイクは監視に努め、ガスはもちろん全員が今まで通り大金を稼ぐことができます。

一見問題ないようですが、もしそうなっていたら残った3人はガスをどう思うでしょうか?

ウォルターは上手くいった!と調子に乗り、今まで以上にガスを舐めてかかったはず。ジェシーも、命令に背いて逃げても何事もなく許されれば、また問題を起こすかもしれません。さらに、もしかしたらマイクも、命令を遂行できずとも何のお咎めなければ、仕事の手を抜くかもしれません。

今回ガスは、この4人に顔に泥を塗られたも同然です。ジェシーは逃げ、ウォルターはストリートの売人も「頼みの綱」のゲイルも殺し、マイクとヴィクターは状況をコントロールできず、さらにヴィクターはガスと彼のビジネスを危険に晒しました。誰一人命令を守らず状況は悪くなるばかりなのに、誰も罰さず皆今までどおりに…なんて、ガスとしてはそんな生易しい形で終わらせるわけには絶対にいかなかったんだと思います。

そもそも、ヴィクターが逃亡先で逮捕される可能性もゼロではありません。そういう意味でもヴィクターには完全に消えてもらう必要があったんだと思います。

暴力を嫌うガスが手を下した理由

ただ、ガスはメキシコからやってきた双子の殺し屋のことを「ケダモノ」と呼んだり、「恐怖では人のやる気は引き出せない」と言っていますし(※S3E4「ゴーサイン」、普段の態度からみても暴力や血を嫌う性格だと思われます。それでも、今回あえて自分の手を汚したのは何故か。

命令に背いた4人(というか1人は死んじゃうので3人)に、二度と逆らう気も起きないほど強烈な警告を発する必要があったからじゃないでしょうか。

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ガスが部下に手をかけるということがいかに「異常事態」だったかは、ガスがヴィクターの首を切った瞬間、マイクがガスに銃を向けていることからもよくわかります(一番驚いたのはマイクだったかも)。

ガスは3人にヴィクターの苦しむさまを見せつけつつ、目はまっすぐ3人を睨みつけていました。このときガスは「信頼してきた助手でも、必要とあらば私は殺す。お前たちはこうならないとでも思っているのか?」的な、無言の(かつ強烈な)メッセージを送っていたんだと思います。

というわけで、ガスがヴィクターを殺したのは残る3人に対しての警告であり、ビジネスを守るために必要な行動でもあり、強烈な不満と怒りの表現でもあった…と、私は解釈していますが、いかがでしょうか(ツッコミお待ちしてます)。

カッターは元々ゲイルが使っていたもの

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余談ですが、このエピソードの英語タイトルは「Box cutter」で、ガスがヴィクターの喉を掻き切ったボックス・カッター(カッターナイフ)は、エピソード冒頭の回想シーンでゲイルが荷解きに使っていたのと同じものです。

一度観ただけでは気づきにくい、こういう細かい仕込みが大量にあるところも「ブレイキング・バッド」の魅力のひとつですね。

【UPDATE】 ガスはヴィクターを殺したくはなかった

ガスを演じたジャンカルロ・エスポジートご本人が、RedditのAMAに登場した時のビデオメッセージでヴィクター殺害について語っていました。曰く、ガスがヴィクターを殺害したのは「ファミリー」全体を危険に晒したからで、ガスにとっては彼の部下はみんな「家族」であり、ヴィクターのことも好きで殺したくはなかったのだと言っています。

Bonus: Gus’s Relationships with Jesse, Mike, and Gale | Youtube

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