最終話「フェリーナ」の別れのシーンでは、スタッフ全員が泣いていた

最終話「フェリーナ」にはウォルタースカイラーが最後の会話を交わすとても切ないシーンがありますが、このシーンの撮影中、カメラマン含めその場にいたスタッフ全員が泣いていたようです。

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この構図がもうね…(滂沱)

二児の父であるカメラマンも涙をこらえきれず…

アルバカーキに戻ったウォルターがスカイラーの元を訪ね、自分がやったことは家族のためでなく「全て自分のためだった」と初めて認めるシーン。そしてその後に続くホリーとの最後の別れのシーンは、素晴らしい演技と脚本、演出、映像の美しさが相まって、涙腺が刺激されてやまないシーンですが、「フェリーナ」のコメンタリーでは、製作者ヴィンス・ギリガンが「撮影中その場に誰一人として泣いていない人はいなかった」と繰り返し言っています。

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カメラ・オペレーターのアンディ・ヴォーゲリ(Andrew Voegeli)さんもその一人。ギリガン曰く彼は普段「非常に男らしい男」なのだそうですが、当時下の女の子が生まれたばかりだったというアンディさんはホリーのシーンでカメラを持ったまま泣いてしまい、涙を拭うために何度かファインダーから目を離さなければならなかったとか。ギリガン曰く「涙が溢れていて、レンズを通して殆ど見えてなかったみたいだ。それを見てまたみんな感動してしまったよ」。

ウォルターを演じたブライアン・クランストンは、このギリガンの言葉に「彼(アンディ)は女々しいんだ」と冗談を言っていましたが、そういうご本人もホリーを見つめるシーンでは涙をこぼしていましたね。別のドキュメンタリーでは「実は泣かずに演技するつもりだった(けれど無理だった)」と語っていました。

思わず泣いてしまったカメラマンのアンディさん。アンディさんのTwitter(@AndyVoegeli)は「ブレイキング・バッド」の舞台裏画像がいっぱいです。必見。

柱の陰からウォルターが現れる演出は意図されたもの

また、このシーンの前、マリーとの電話を切ったスカイラーの背中にカメラが近づくと、柱の陰からウォルターが現れるシーンがありますが、この演出はもちろん意図的なもの。

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カメラがスカイラーの背中に近づくと…
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ただ、最初から脚本に書かれていたわけではなく、ギリガンとスタッフがこのシーンを撮影する予定だったアパートで打ち合わせをしていたところ、ギリガンの反対側にいたスタッフが柱に隠れて見えなかったため「最初ウォルターが柱の陰に隠れて見えないのはクールじゃないか?」と思いついたそうです。

ただ、本物のアパートは狭すぎて壁もあるためこの撮影は難しいと判断、最終的にはアパートを丸ごと再現したセットを作って撮影したようです。

スカイラーが電子レンジに写り込んでいるのは偶然

さらに上のシーンの直後、スカイラーの背中しか見えない場面がありますが、このとき電子レンジにスカイラーの表情が映り込んでいます。静止画だといまいちわかりませんが動画だとハッキリ映っていて、私はこれも演出だと思っていたんですが、こちらは全くの偶然のようです。

「ブレイキング・バッド」のオンエア後に放送されていた「トーキング・バッド」や前出のコメンタリーでギリガンが語ったところによると、「僕が考えついたんだ!と言いたいところだけど、たまたまスタッフがレンジをそこに置いて、たまたまアンの顔が映ったんだ」とのこと。撮影中も気づかず、編集スタッフに指摘されて初めて「これはイイ…!」となったようです。

また、「トーキング・バッド」では、このシーンのスカイラー(アンナ・ガン)はやつれた感じを出すためにメイクを青白くし、ひと回り大きいサイズの服を着ていたことも明かされています。

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スカイラーの表情がレンジのガラスに映っている
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このシーンのアンナ・ガンは至高

アンナ・ガンはこの時のスカイラーの心境について、次のように語っています。「全ての騒動が始まって以来初めて、ウォルターが本当のことを言った瞬間だったと思う。たぶんスカイラーにとってはこの数ヶ月で初めて、深く息を吸えた瞬間だったんじゃないかしら。でも、何もかもが遅すぎた」「(真実を聞かされて)彼女は瞬時にかつての彼を思い出し、かつての家族を思い出し、かつて自分たちが持っていたものを思い出して…そして、いかに何もかもが焼き尽くされたのか知ったのだと思う」。

このエピソードのスカイラーの表情は本当に見事で、心の動きが手に取れるような、それでいて押し付けがましくない本当に素晴らしい演技だったと思います(何様)。個人的には最後、ホリーを見つめるウォルターを見て、かすかに笑みを浮かべるスカイラーの表情がとても好きです。全編通して一番美しいと思います。