【太陽に近づきすぎた】何故ウォルターはヴィクターの話を持ち出したのか

S5E3「新しいチーム」のラスト近く、ウォルターは突然ヴィクターの件を持ち出し「彼は太陽に近づきすぎたんだ」と言いますが、この言葉は一体どういう意味なんでしょうか?

s5e3

このシーンのウォルターのセリフは以下。

ずっと思ってた
ガスが彼(ヴィクター)の喉を掻き切ったのは私への脅しだとな
それだけじゃなかったかも
ヴィクターはブツを作ろうとして自分の領分を飛び越えた
それで太陽に近づきすぎて死を招いたんだ
※吹替版

太陽に近づきすぎて死を招く、とは?

ウォルターの言う「太陽に近づきすぎて死を招く」とは、ギリシャ神話の「イカロスの翼」のことですね。ほとんどの方がご存じかなーとは思うんですが、簡単にいうとこんなお話です。

イカロスは、名工ダイダロスの息子。ダイダロスはミノス王に命じられて迷宮を作りますが、その迷宮がある勇者に破られたため王の怒りを買い、イカロスとともに高い塔に幽閉されてしまいます。
ダイダロスは鳥の羽を蝋で固めた翼を身につけイカロスとともに逃亡、イカロスに「太陽に近づきすぎるな」と警告しますが、飛ぶ楽しさに我を忘れたイカロスは高く高く飛んでしまい、ついには熱で蝋が溶けて墜落死してしまいます。

icarus
Jacob Peter Gowy作のイカロス via Wikimedia

多くの絵画や彫刻の題材になっていて、日本でも、有名なところだと「みんなのうた」の「勇気一つを友にして(リンク先Youtube)」という曲の元にもなってます。ただ、この「勇気一つ〜」ではイカロスの行動を「鉄の勇気を 受けついで 明日へ向かい 飛び立った」とポジティブに描いていますが、本来のイカロスは忠告も聞かず舞い上がった愚か者であって、「身の程を知れ、調子にのるな、親の助言は聞け」という教訓の物語なので、意味が全く真逆になっています。

「ブレイキング・バッド」に話を戻すと、ヴィクターは化学の知識が皆無にも関わらず、ガスに断りもせず「オレにもメス作れるぜー!」とばかりに勝手に行動したため「死を招いた」ということだと思います(もちろん大前提としてウォルターたちへの「警告」でもあった)。

【関連記事】【考察】ガスは何故ヴィクターを○したのか

「イカロス」は誰のことか

でもなぜこのタイミングで突然ヴィクターの話を持ち出したんでしょうか?

このセリフの直前、ウォルターとマイクジェシーは3人で取り分を分けていました。ウォルターは必要経費(ガスの元部下への「危険手当」含む)の額に明らかに不満そうでしたが、これらの経費はガスが健在であれば必要なかったものなので、マイクは「ジェシー・ジェームズ(※)を殺してもお前は彼にはなれない」と遠回しにウォルターを責めていて、かなり不穏な空気。

james

※ジェシー・ジェームズ:アメリカ西部開拓時代の犯罪者。強盗団を率い、世界で初めて銀行強盗を成功させたと言われています。殺人も厭わない重罪人ですが、敬虔なキリスト教徒でなおかつ美男子だったため、強者に立ち向かうロビン・フット的な存在として伝説になったようです。詳細はWikipedia

その直後、ウォルターがジェシーに取り分をどう思うか聞いた直後の「太陽に〜」です。

なので、このセリフでウォルターがイカロスに例えているのはマイク、太陽はウォルター自身のことだと思われます。ヴィクターがガスの意に反して殺されたのと同じく、今後マイクがウォルターの意に沿わないようであれば…?と匂わせているんですね。これを聞いたジェシーは心配そうな、かつ知らない人を見るような目でウォルターを見ています。ウォルターの肥大しつつある自尊心と自信が垣間見れるシーンだと思いますが、もっと言えば、太陽に近づきすぎているのはウォルター自身かも…。

(関係ないけど、このセリフの前、ジェシーはアンドレアの話してるのに「そうじゃなくて取り分のことだ」とか言って全然聞いてないウォルター酷い…)