【考察】ウォルターは「なぜ」ブロックに毒を飲ませたのか?【動機】 | トリビア | 海外ドラマ「ブレイキング・バッド」ファンサイト Breaking Bad Fan JP

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ブレイキング・バッド」ファンの間で様々な議論を呼んでいるブロック×リシン事件。ウォルターはなぜブロックに毒を飲ませたのか?その動機について考えてみました。

ネタバレ注意!!!
以下、主にシーズン4エピソード12で起きた事件について書いていますが、このエピソード前後にも触れているので、全編見終わっていない方はネタバレ注意

子供に危害を加えることは普通の大人ならタブー視するはずですが、ついにウォルターは普通じゃなくなってしまったようです。シーズン4ラストでスズランのアップを見たときには「え…ウォルターがやったの?マジで?そんな黒いの!?」と本当にゾッとしました。

と同時にいろいろ疑問が…。本当にウォルターが?なんで?いつ?ていうかなんでリシンなのにスズラン…??などなど、初めて見たときには頭が「?」でいっぱいになった覚えがあります。

その後何度か通して観て、今ではそのあたりも整理できてきたので、私なりにちまちままとめてみました(長文注意)。

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そもそもガスは本当にウォルターを殺すつもりだったのでしょうか?もしウォルターがガスに言われた通りメスの製造を辞め、ジェシーに近づかなければウォルターも家族も無事だったのでは?

…と最初観た時思ったんですが、どうもそうではなさそうです。

ガスがウォルターを拉致して告げたことは3つ(シーズン4エピソード11「降りそそぐ危機」)。

  • 二度とクリーニング工場に来るな
  • 二度とジェシーに近づくな
  • ハンクはガスが始末する、邪魔をするな

1、2はよくても3、ハンクの件があります。ガスの言う「始末する(吹替:処理する、英語:deal with him)」とはもちろん、ガスがハンクを殺すということ。

ウォルターの性格上、メスラボにもジェシーにも近づかないようにすることさえ難しそうですが、万一それができたとしても、ハンクが殺されるとわかっていて見過ごすことだけは絶対にできなかったはず。ハンクを守ろうとすること=ガスの邪魔をすることになりますが、ガスは「もしそうすればウォルターの家族全員を殺す」とハッキリ言っています。

ガスは感情で動くタイプではなさそうなので、もしウォルターが約束を3つとも守ればウォルターも家族も生き残る可能性があったかもしれません。しかし、どちらに転んでもハンクは死ぬことになります。ウォルターはハンクを見捨てることができない。したがって、少なくともウォルターは「このまま行けば全員殺される」と確信したはずです。

ガスが実際にウォルターを家族もろとも殺そうと思っていたかどうかについては不明ですが、機会があれば、またジェシーの承諾を得られさえすれば、ウォルターだけは殺すつもりだったのではないかと思います。もしウォルターが約束を守ろうとも、知りすぎた彼がガスの「ビジネス」にとって今後も大きな障害になりうることに変わりはないからです。

とはいえ、もしウォルターがハンクの件でガスの邪魔したとしても、ガスは即ウォルターを殺すことはできなかったと思います。なぜならガスはもしウォルターを殺せばジェシーがメスの製造を拒否するとわかっていたからです。ジェシーが拒否すればラボは稼働せず、ガスは大きな損害を被ることになる。したがって、少なくとも当面はジェシーの意見を尊重する他ありませんでした。

jesse-dontkillhim-6046873 ジェシーは何度もガスに「先生を殺すな」と言っている

ガスにとって、今後も安定した「ビジネス」を続けるに当たって、高純度のメスを作れる、今となってはたった一人の調理人=ジェシーの存在は必須。

さらに、大きな障害となりうるウォルターを排除するためにもジェシーの承諾が必要。

この時点でガスの裏ビジネスの鍵はジェシーが握っていたことになります。

(ただし、クリーニング工場がDEAに踏み込まれた時、ガスはジェシーの制止を聞かずウォルターについて「適切に対処する」と言っていたので、もしかしたらジェシーの承諾を得ないままウォルター殺害に踏み切った可能性もあります。でも、やはりそれは最終手段だったとも思います)。

一方、ウォルターにとってもジェシーの存在がとても重要でした。

ガスに脅されたウォルターは、まず「ハンクの件はDEAに警告して守ってもらい、自分たち家族は人消し屋に頼んでどこかに消えよう」と考えましたが、スカイラーがテッドに金を渡してしまったため金が足りずこの案は実行不可能に。

こうなってしまっては、もはや自分と家族、ハンク、全員を救うためには先にガスを殺すという選択肢しか残されていません。しかしこちらが行動を起こす前にジェシーが自分を殺すことに同意してしまえば…?

さらに、自分はガスに近づくことさえ難しい。ガスの行動を把握したり工作したりすることもできない。そこで、ガスの側にいて自分の思い通りに動いてくれる人物、すなわちジェシーの存在が絶対に必要でした。

ウォルターの命を左右する鍵もまた、ジェシーが握っていたということになります

この時点で、ガスとウォルターのどちらが生き残るかは、どちらがジェシーを味方につけるかにかかっていたんですね。

加えてウォルターには、自分がある意味息子のようにかわいがっていた(つもり)のジェシーがガスの側につくのは我慢ならない、という感情的な理由もあったように思います。

というわけで、ウォルターにとって、ジェシーを自分の味方につけることは必須。しかし、この時ウォルターとジェシーの仲は最悪でした。

ジェシーがメキシコ行きを命じられた際、ウォルターは「失敗して始末されろ」と突き放し、殴り合いの喧嘩の末二人は決裂しています(シーズン4エピソード9「膨らむ疑惑」)。
その後ウォルターがジェシーの家に命乞いに行った時には「二度と来るな」と追い返されていました(シーズン4エピソード11「降りそそぐ危機」)。
ジェシーはウォルターが死ぬことまでは望んでいないものの、ウォルターに対して強い怒りを感じていたようです。

そんなジェシーを説得するにはどうしたらいいのか?

まず、話をする機会がなければいけない。ウォルターが電話をかけたところでジェシーは出ないはず。直接会うとしても、ウォルターのほうから会いに行けばガスに察知されるかもしれない。そこで、ジェシーのほうから自分のところにやって来るよう仕向ける必要がありました。けれど、仲違いしている今、ジェシーが自らウォルターのところに来ることがあるとすれば、友好的な理由ではなく敵対的な理由、例えば「ウォルターに対して怒り狂い、殺しに来る」という理由くらいだろう、とウォルターは考えたのだと思います。

ではジェシーが激怒することとは何か?過去ジェシーが人を殺しかねないほど怒ったのはたった一度、アンドレアの弟を殺したディーラーに復讐しようとした時だけでした(シーズン3エピソード12「憎しみの連鎖」)。ジェシーの最大の弱みである子供 = ブロックに何かすれば、必ずジェシーの怒りを引き出すことができるとウォルターは踏んだようです。

しかし「ブロックに何かしたのはウォルターに違いない」とジェシーが考えなければ、ジェシーはウォルターのところにやってきません。そこでリシンの登場です。リシンのことを知っているのはジェシーとウォルターだけ。ジェシーが持っていたリシンがなくなり、ブロックが入院したとなれば、ジェシーが考えうる原因はリシン、犯人は自分以外にたった一人、リシンのことを知っていたウォルターです。だからこそ、ブロックが飲んだのはリシンだと思わせる必要があり、そのためにはジェシーのリシンを奪う必要がありました。

リシンは猛毒で、解毒剤も存在しません。ウォルターの目的はあくまでジェシーを説得することであって、ブロックを殺害することではありませんでした。しかし、ブロックにはジェシーがリシンを飲んだのではないかと疑うに十分な程度、苦しんでもらう必要がありました。そこでウォルターは自宅の庭にあったスズランを使うことを思いついたようです。

スズランも摂取する量を誤れば死に至るほどの猛毒を持っていますが、リシンほど致命的ではなく、回復した例も多いようです。のちにウォルターは「量は計算した」とジェシーに告白しています(シーズン5エピソード13「決別の荒野」)(スズランについてはこちら→スズランの毒性はどの程度のものなのか?)。

最終的にはリシンではなくスズラン毒だったということが判明し、ガスの仕業ではなかったことがジェシーにもバレてしまいますが、その時点ではすでにウォルターの目的は達していたので結果オーライ。

ただ、元々ジェシーが持っていたリシンは確かになくなっていたため、ジェシーは「一体どこでなくしたのか」と悩むようになります。ここでもウォルターは小芝居を打って問題を収めました。リシンを探すふりをして、ジェシーの家の掃除機にリシンの小瓶(実際には塩)を吸い込ませ、それを「発見」していましたね(シーズン5エピソード2「再始動に向かって」)(このとき「俺はなんてバカだ」と泣くジェシーがかわいいやら、かわいそうやらでもう…)。

ちなみに、元々ジェシーが持っていたリシンはソウルからウォルターの手に渡り、ホワイト家のコンセントカバーの裏に隠され、のちにリディア殺害に使われることになります。

ウォルターがスズランに思い至ったのはある偶然がキッカケのようです。

lilyofvalley-1502529 「ピコーン!」の瞬間

ソウルが匿名でハンクの件をDEAに通報してくれたおかげで、ウォルターの家族もハンクの家で保護してもらえることになりました。が、ウォルターは自分がいては家族が危ないからと自宅にひとり残ります。その時ウォルターは、庭で半ばあきらめたように手元の銃をくるくる回していました。

最初の2度は銃口がウォルター自身を指して止まりますが、3度目には庭の「ある植物」のほうを指して止まります。その銃口の先にあったのがスズランで、ウォルターはその瞬間に計画を思いついたようです。

自分を殺しに来たジェシーを説得し「ガスを殺さなければならない」と思い込ませるのは至難の業ですから、ウォルターがジェシーに撃たれて死んでしまう可能性も十分あったと思います。ただ「これが成功しないかぎりどう転んでも殺される」とウォルターにはハッキリわかっていたので、リスクの高い賭けにでたのだと思います。

結果的には、ウォルターに対してあれほど怒っていたジェシーもウォルターの話を信じました。ウォルターの言うようにガスの仕業だったとしても辻褄が合うからですね。ウォルターを殺すことに同意していなかったジェシーが自らウォルターを殺したとなれば、ガスとしては一石二鳥ですから。

私もジェシー同様ウォルターの「平気で子供を利用するのは誰だ?目的のためなら子供も殺す男は?ガスだ!」を信じていたので、シーズン4最終話を観終わってビックリ。一緒に見ていた家族と「マジでーーーー?そんな暇あった?どうやって?」とひとしきり盛り上がりました。

いつ、どうやって、は劇中では描かれていませんが、それについても考えてみたので、よかったら以下関連トリビアもどうぞ。

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