【S2E8 フィフィ】国境検問所の長回しはどうやって撮られたのか? | トリビア | 海外ドラマ「ベター・コール・ソウル」ファンサイト Call Saul

ベター・コール・ソウルS2E8「フィフィ」の冒頭、カメラは国境を越える一台のトラックを追い続けますが、このシーンの映像は途切れることなく約4分半近く続いています。所謂「長回し」ですが、どうやって撮影したのでしょうか?

見事な長回しに圧倒された方も多いと思いますが、私も「あれ…まだ続いてる…まだ続いてるよコレ!」と無駄に緊張しながら観ました。この映画的手法は放映後すぐ話題になり、Forbesには脚本を書いたトーマス・シュノーズ氏の8ページにも及ぶインタビューが掲載され(根性で読んだ)、米掲示板Redditでは次々このシーンに関連するスレッドが立っているようです。

シュノーズ氏のインタビューによると、脚本を書いている段階では長回しは想定していなかったようですが、このエピソードを監督したラリーサ・コンドラキ女史の提案で実現したとのこと。「少し心配したよ。だってものすごく意欲的な試みだったからね。僕らのスタッフには(技術的に)できないからということじゃなくて、時間もお金もかなり限られていたから」。

実際の撮影方法については、Redditの「『フィフィ』冒頭の長回しのシーン、どうやって撮ったの?」というスレッドにこの現場にスタッフとして参加したという人が現れ、詳しく説明してくれています。

このシーン、まず”主役”のトラックの後ろからカメラが近づき次第に上昇、振り返って長いトラックの列を映していますが、実際はクレーンに乗ったカメラ・オペレーターがステディカムで撮っていたようです。この時使われたTitanというクレーンは、人が乗れるようになっていて移動もできるのだとか。クレーンはトラックの後方から近づき、上昇しつつトラックと平行して移動、さらに少し追い越して後方の地平線を映しています。

その後、カメラ(クレーン)が下降してから検問所の中に入るまでは、Griptrixというドリー(ゴルフ・カートのような形をした撮影用の車)に乗り換えて撮っているそうです。さらに検問所の中に入ったところでカートを降り、そこからは徒歩なのだとか。この間ステディカムは回りっぱなし。どこでクレーンからカートに乗り換えたのか、カートから降りたのか、観直してみてもほとんどわからないレベルです。

このあたりでクレーンから降りてカートに乗り換え… このあたりでカートから降りている模様

撮影には10時間ほどかかったとのこと。Redditでは「その価値ある」「すばらしかったよ。10時間も費やしてくれてありがとう!」と賞賛の声が寄せられていました。

シュノーズ氏がTwitter(@TomSchnauz)にアップした舞台裏写真にも、このクレーンとドリーが映っています。

また、Insider Podcastで製作者ヴィンス・ギリガンが語ったところによると、このシーンはオーソン・ウェルズ監督の1958年の映画「黒い罠(原題: Touch of Evil)」の有名な長回しシーンにインスピレーションを得ているようです(「黒い罠」の長回しシーンはこちら。すっごい長い! → Touch of Evil – Opening Scene | Youtube)。

シュノーズ氏のインタビューやInsider podcastによると、ひと続きの切れ目のない映像に見えるこのシーン、実は2つの映像を編集でつないでいるとのこと(どうしてそうしたのかは不明)。

Redditには早速「どこを繋いでるのか?」というスレッドも立ち、たちまち特定されていました。検問所に駐車したトラックの後部ドアを開ける直前、国境警備隊の職員がカメラの前を横切り一瞬画面が真っ黒になりますが、その前後で柱の影が違う!とのこと。確認すると確かに違います。Redditor恐るべし…!

柱の影がわりとハッキリ見える 影がなくなっている(静止画だとアレですが、動画だとよくわかります)

このシーンは実際の検問所ではなく、アルバカーキの小さな空港(Double Eagle II Airport)で撮影されたとのこと。画面に映り込んでいた管制塔や格納庫はデジタル処理で消され、代わりに国境を区切る柵をデジタル処理で追加しているそうです。

また、ゲートの天井は実際には黒くて厚みのない屋根ですが、これもデジタル加工されニューメキシコにあるサンタ・テレサ検問所ゲートそっくりになっています。

トーマス・シュノーズ氏のTwitterより(@TomSchnauz) デジタル加工で追加された天井部分

さらに、トラックがずらーっと遠くまで並んでいるところが映っていますが、この場面も実際にはT字になって途切れている道をまっすぐに伸ばし、トラックも追加しているのだとか。VFXすごい。

これらのVFXは「ウォーキング・デッド」や「ブレイキング・バッド」のガスの例のシーンなどで素晴らしい映像を見せてくれたビル・ポウロスキ氏が担当したそうです。

常々「ベター・コール・ソウル」は映像がきれいだなぁと惚れ惚れしながら観ていましたが、今回のこの長回しは緊張感があって本当にすごかったです。でも、パトカーの後ろをカメラが着いて行くシーンで「このあとパトカーからハンクが降りてくるんだよね…?」とすっごい期待してしまい、長回しから気がそれたのは私だけじゃないはず…!

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