「ベター・コール・ソウル」S4E1「煙」なぜジミーは急に元気になったのか? – 海外の反応 & 製作者の意図 | トリビア | 海外ドラマ「ベター・コール・ソウル」ファンサイト Call Saul

シーズン4でチャックを失ってからのジミーの反応がいわゆる”普通の”反応とは全く違っているため、「一体彼は何を考えているんだ?!」と議論を呼んでいます。

以下「ベター・コール・ソウル」シーズン4、エピソード2時点での考察です。
S4E1までのネタバレを含みます。未見の方はご注意!

シーズン4エピソード2「息の根」でのジミーの行動についてはこちら

“Well, Howrad, I guess that’s your cross to bear.” © AMC

チャックの死を知って以降、ジミーはほとんど喋らず行動も起こさず、自分の殻にこもってしまったように見えました。ところが、葬儀のあとハワードが訪ねてきて「チャックは自分のせいで自殺したんだと思う」と告白すると…。ジミーは落ち込むハワードに対し、

それは君が背負うべき十字架だな

…と言い放ち、突如元気を取り戻します。

ジミーは一体なぜハワードにあんなことを言い、なぜ急に元気になったのか?

製作者ピーター・グールドが「チャックとジミーの関係は『ベター・コール・ソウル』の核をなすものだ」と語っているように、チャックの死がジミーに与えたインパクトはとてつもなく大きかったようです。

海外の反応…っていうか主に掲示板「Reddit」での視聴者の反応です。

Redditの放送時のライブスレッドをのぞいてみると、ラストで「だめだジミー!だめ!」「ひどい」「ジミーつめてええええ」「ソウル誕生」「あご落ちた」「なにこれ?」「え、なんでこんな機嫌良くなるの?」「このシーズンはやばいことになるぞ」などなど、さまざまな反応があったようです。 その後もこの件についてのスレッドがいくつもできて、熱心な議論が交わされています。

投稿がとても多く全部は読み切れていませんが、ジミーの行動の理由について、Redditorからは以下のような理由が挙げられていました。

チャックの死の原因は、自分が保険会社にチャックの失態をバラしたせいではない、ハワードがチャックを追い出したからだったんだ!と思い(または思い込もうと決め)、肩の荷が下りて急に元気になったのでは、という意見。「そもそもの責任はチャックにあるし、ハワードにも責任あるし。保険会社だって、ほっといてもそのうちチャックの件を知ったことだろう」と、ジミーを擁護する声が少なくありませんでした。

チャックが亡くなってからジミーが落ち込んでいたのは、チャックに仕返ししようと思って保険会社にバラしたのに、効果が出る前に相手が死んでしまったからだ、と考えた人もいたようです。ハワードの告白で元気になったのは、自分が原因だったと知って「誰にも気づかれずうまく復讐を果たすことができた!」と満足したからだ、というんですが、それ怖すぎない…?

ボブ・オデンカーク氏の考えは、ある意味これに近いようです。ええ…(困惑

チャックはジミーとハワードへのあてつけに死んだんだ、とジミーは思ったんじゃないか?とする声もありました。チャックは自分を否定した二人に、残りの人生を後悔を抱えて生きていってほしかった。ジミーは「チャックの死は俺への最後の『●ァック・ユー』だったんだ」と思い、彼について考えるのを辞めたのでは、という意見。「俺へのあてつけに死んだのか?そうか、それなら忘れてやる!」と。

ジミーは以前、打ちひしがれた(ふりをした)チャックに同情して自分の罪を告白してしまい、大変な目に遭いました。今回のハワードにも同じ意図があると思ったのでは?という意見。「ハワードは俺になにか原因があるのではと疑っていて、落ち込んでるふりをして罪を告白させようとしているんだな、そうはいくか」と考え、それを”うまく切り抜けられた”から、あの笑顔なのでは?と考えた人もいるようです(その発想はなかった)。

一番支持が多かったのは「ジミーは自分がチャックの自殺の原因だったという事実を受け止めきれなかったのでは?」とする意見。あまりにも罪の意識が大きすぎたため、いわゆる「対処メカニズム(精神的苦悩や問題に対処するために働く自己防衛反応)」として、”ソウルモード”になったのだ、というものです。まるで二重人格のようにソウルに”切り替えた”のだと。
あるRedditorは「ジミーが自分を守ろうとしてるのは確かだ。彼が自分の罪を認めればチャックが正しかったことになる (※)。チャックの勝ちだ」と言っていました。なるほど…。
※シーズン3でチャックがジミーに言った言葉↓のこと。

S3E10「灯り」より。「後悔してるって?何の意味がある。どうせまたやるのに。それがお前だ。何度も繰り返し人を傷つける。そして反省してみせる。いっそこんな茶番はすっ飛ばしたらどうだ。結局、お前はみんなを傷つける。どうしようもない」

同じものを観ているのに人によって全く受け取り方が違っているのが面白いですねー。

私個人は「ああ、自分のせいだと認めたくないからハワードに責任を押し付けて、楽になった気がしてるのかな…」と思ったので、見た目の通り「チャックが死んで幸せ」とする意見がわりとあったのには驚きました。でも、うーん、少しは「ざまあ」な気持ちもあった…か…?どの説も一利あって、間違ってない気もします。

ただ、「ジミーはチャックの死をあまり(または全く)悲しんでいない」と思った人も結構いたようですが、いやいやそれはないだろー!!と思います。Redditでもこういった意見に対し「ジミーはずっとチャックのことを気遣い、チャックに認められたい一心で行動してきたのにそんな馬鹿な」と、ジミーを「聖セバスチャン」になぞらえて長文で反論している人もいました。素敵。

視聴者はジミーの行動をあれこれと推測していますが、実際のところどうなんでしょう?製作者からなにかヒントはないものか、とインタビューを漁ってみました。

ジミー役のボブ・オデンカーク氏はAMCのインタビューで「彼はチャックを傷つけ返してとても嬉しかった」と答えています。えー!以下抜粋&超意訳です。

チャックの家の裏庭に電子機器が運び出されていたから、ジミーは早々に自殺だと結論づけた。そして原因はなんだったのか、なにか兆候はあったかと考え続け、最後にチャックに言われた言葉を思い出せば出すほどチャックに対し怒りを感じていた。 僕が思うに、ジミーはいつの日かチャックに「ひどいことを言ってしまった」と言わせられると思っていたのに、その機会は永遠に失われてしまった。怒りも感じるが、寂しい気もする。このエピソードの大半、ジミーは自分がどう感じているのかを整理しようとしている。彼は麻痺したような状態(Numb)だ。

(ハワードの告白を聞き)チャックの死に自分が加担していたことを知った。そのことをひどく恐ろしいと感じるか、チャックが言ったことに対する仕返しをしただけと見るか、どちらか選ばなくてはならない。そして彼は選んだ。彼はそうなったことを喜んだ。 この上なく醜いし悲劇的だけど、(略) 彼はチャックを傷つけ返すことができてとても嬉しかったんだ。

ひいー!

別のインタビューではこんなふうに言っています。

シーズン3最後にチャックがジミーに言った言葉は、ジミーにとって最も大きな「つまづき」だ。彼はそれに足元をすくわれ大きく転んだ。彼が今後これを乗り越えられるとは僕には思えない。(略)なぜジミーはチャックに言われたことをキムに話さないのか?(チャックの言葉が)あまりにも破壊的で強大だったからだ。こんなふうに考えてると思う。「チャックとは終わりだ。彼の考えてることを気にしたり、彼に愛されないことで悲しむのは辞めだ。俺の世界に一秒たりとも入り込ませないぞ。彼は俺の世界から消えた」と。

Redditorの推察の2と5を合わせたような感じでしょうか。額面通り「嬉しかった」とするとジミーは相当なモンスターですが、もちろんそれだけではないはず。

ただ、このオデンさんの「回答」には納得がいかないと言っているRedditorもいました。演じてる本人が言ってるんだから…と思いつつ、私もその一人だったりします。だって、そんなジミー イヤなんじゃよ…。

製作のピーター・グールド氏はあるインタビューで「このエピソードについては視聴者を心から信頼している」と語っています。以下抜粋 & 毎度の超意訳。

ジミーがハワードの告白を聞いた途端、彼は元気づいて、チャックに何が起こったのか知る前の彼に戻ったように見える。あの行動は僕には非常に興味をそそられるし、視聴者にとってもそうであってほしい。興味深く、ミステリアスだ。テレビや映画のストーリーについて話す時、僕らは物語の謎について話している。普通は「誰が誰を殺したか」「誰が宝石を盗んだか」とかだけれど、今回のケースでは、謎は「この男に一体何が起こっているのか?」だ。そしてそれこそがこのシーズンを通じて明らかになっていくことだ。

ジミーは(チャックの死に)ものすごい衝撃を受けた。人生を変える出来事だ。彼がそれとどう向き合うかはとても複雑で興味深い。ジミーにはいくつもの面があって複雑で、とても一言、一文で表すことなどできない。

ジミーのあの反応は「原因がこうだから結果がこう」というような単純なものではなさそうです。今後のエピソードで、あのときのジミーの行動の意味がある程度わかるようになるかも…?

今後と言えば怖いのは、保険の件の発端がジミーだということを、まだキムもハワードも知らないこと。これがのちのちジミーに跳ね返ってきそうな気がします…。

ハワードさん…。

個人的に、シーズン4最初の2話で、見ていて一番辛かったのがハワードでした。ジミーに「君が背負っていく十字架」と言われたときのハワードの顔!胸がつぶれそうになりましたよ…いやホント…。Redditでもハワード役のパトリック・ファビアンを褒め称える声が上がっていました。見直しても一瞬で色んな感情を見事に演じていて、本当にすごい。ていうか何度見ても辛い…。

ハワードは最後にジミーに会った時、嫌悪感丸出しの顔で「まるでゴラムだな」と言い、ポケットからお札を取り出して「恵んでやる。次は缶を持ってくるといい」と言っていました。が、今回の子供のように打ちひしがれたハワードたるや…。

S3E9「転落」より。「恵んでやる」 かわいそう…かわいそう…

ただ、ジミーはハワードに対しても怒っていたからあんな冷たいことを言った…というわけではなさそうです。ボブ・オデンさんは前出のインタビューで「ハワードのことは気にしてもいない。ハワードを傷つけたかったわけじゃないが、責任を取るつもりもない」と言っています。ハワード…(泣

個人的にハワードについて面白いと思うのが、「ベター・コール・ソウル」が始まった頃はハワードこそがジミーを排除してきた「ワルモノ」だと思っていたのに、実は黒幕がチャックだとわかると「そんな悪いやつじゃないのかも」となり、次第に「会社を守りたいだけなんや…この人悪い人ちゃうで…」となり、ここに至って「ハワードがんばってえええ!」となったことです(私がw)。ハワードはハワードのままなのに。

製作者にいいように転がされてるこの感じ、「ブレイキング・バッド」を最初に観た時のことを思い出します。もっと転がしてくれ…!

Copied title and URL