【考察】ガスがカルテルのメンバーに使った毒物は何? | トリビア | 海外ドラマ「ブレイキング・バッド」ファンサイト Breaking Bad Fan JP

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シーズン4エピソード10「復讐の杯」で、ガス・フリングは因縁のフアレス・カルテルのボス ドン・エラディオとその部下の10名に何らかの毒を盛りましたが、この毒物は一体何だったんでしょうか?

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ガスが何の毒を使ったのかは劇中では明らかにされていません。そのせいか、放映当時の海外の質問系サイトやファン掲示板では「ガスは一体何の毒を使ったのか?」が議論されていたようで、いろんな毒物の名前が挙がっていました。例を挙げると、リシン、ヒ素、テトロドトキシン、ストリキニーネなどなど。見ているだけで具合が悪くなりそうな猛毒が並んでいますが、ガスが使ったものはこの中にあるんでしょうか?そもそも実在する毒物なんでしょうか。

というわけで、該当するものがあるかどうか、代表的(?)な毒物を調べてみました。以下、あくまで毒物素人がちまちま調べてみたものですので、参考程度にご覧ください。

前提条件

  • 酒に混ぜても毒性が失われず、気付かれない(無味無臭かつ少量で効果がある)
  • 接種後約20〜30分程度で症状が現れる
  • 症状は手足のしびれ・麻痺や運動失調(立てなくなる)など
  • 症状が現れて数分で死亡する
  • 回復後の後遺症はない(以降のエピソードを見る限り)

「ブレイキング・バッド」では猛毒のリシンが何度か登場するため、ガスがカルテルに使ったのもリシンじゃないかという意見が多数ありました。が、どうもリシンではないようです。というのも、リシンは効果が出るのに最低6時間前後、長ければ1〜2日かかると言われていて、毒を摂取してからカルテル・メンバーが倒れるまでの時間を考えるとリシンにしては効果が出るのが早すぎます。

関連トリビア:リシンについてはこちらもどうぞ。ウォルターが精製した毒物「リシン」は本当に危険なのか?

マチンという木の種子から抽出される猛毒ストリキニーネも候補に挙がっていましたが、ストリキニーネは無色無臭でアルコールにもよく溶けるもののかなり苦いそうなので、気づかれずに飲ませるのは困難だと思われます。症状も筋肉が硬直して激しい痙攣が起こり、しばしば異常姿勢(後弓反張)が現れる…とのことなので、この点でも違うようです。

同じく苦味があるという理由で青酸カリ(シアン化カリウム)も該当しないようです。ちなみに青酸カリは独特の「アーモンド臭」もするそうなので、苦味どころか飲む前にバレちゃうかもしれません。ちなみに青酸カリといえば名探偵コ○ンくんが「ペロッ」てしてますが、あれ大丈夫なんでしょうか。

中世ヨーロッパでよく毒殺に使われていたというヒ素の名前も挙がっていました。無味無臭でテキーラに溶かしてもバレなさそうですが、純粋なヒ素の致死量は成人一人あたり約53gにもなるとか(経口摂取・体重約70kgの場合)。10人ものカルテル・メンバーが倒れたことを考えると、ヒ素を使うならあの小さめの酒瓶にかなりの量を溶かさなければいけません。また、中毒症状は「腹痛、嘔吐、下痢」といったものが主だそうなので、この点でも該当しない気がします。

また、純粋なヒ素より毒性が強く除草剤や殺虫剤にも使われる亜ヒ酸の場合、致死量は100~300mgとかなり少なくなりますが、初期症状がヒ素同様「嘔吐・下痢・めまい・痙攣」などであることを考えるとやはり違う気がします。

心不全の治療薬として使用されるジゴキシンはどうでしょう。薬ではあるものの、量を誤ると死亡する危険もある有毒物質で推定致死量は成人で約10mg強と少なめ。ですが、この毒もまず最初に現れる症状は「嘔吐」。同様にニコチンも初期症状は「吐き気や嘔吐」だそうですし、味や匂いも強烈そうなのでまず該当しません。うーん。

さすがにガスが使った毒物としてボツリヌス菌の名を挙げている人はいませんでしたが、自然界最凶だそうなので、一応確認してみました。ボツリヌス菌の致死量は成人でも0.7〜0.9μgだそうで、この計算でいくと1gで100万人を殺せるということになります。これだけ少量ですむのであれば酒に混ぜるのも簡単そうではあるんですが、問題は時間。摂取してから症状が現れるまで平均して約18時間〜36時間、早くても4時間程度かかるそうなので、やはりボツリヌス菌も該当しないようです。

では、フグ毒として知られるテトロドトキシンなどの神経毒はどうでしょう。

テトロドトキシンの致死量は成人1人に対して1〜2mgと非常に少なく、一説には青酸カリの1000倍もの毒性があるとか。アルコールにも簡単に溶け、無色、無味、無臭。摂取すると約20〜30分(遅くとも3時間程度)で症状が現れるようですので、劇中の時間経過と見比べても矛盾しません。症状も、まず「唇や舌、指先のしびれ、言語障害、運動失調、知覚麻痺」が現れ、進行すると呼吸困難により死亡する…とされているので、カルテルのメンバーがグラスをやタバコを落としたり、立っていられなくなったりしている症状とも一致します。しかも、回復後の後遺症もないそうです。

一点、症状が現れた後数分で死亡することがあるのかどうかはわかりませんでしたが、症状や特徴を考えると、ここまで見てきた中では一番近いのがこの神経毒のようです。

というわけで、あくまで個人の推測ではありますが、ガスが使ったのはテトロドトキシンのような神経毒の可能性が高いのではないかと思います。

ただ、これはテトロドトキシンに限らず全ての毒物に言えることですが、毒への耐性は相当な個体差があります。同じ毒でもほんの少しの量で亡くなる人もいれば、致死量を大幅に超えた量を摂取しても助かることもありますし、もちろん、症状が現れる時間もその人の健康状態や体力によってまちまちです。

劇中では、それまで楽しく酒を飲んだり水着のおねーさんをかまったりしていたカルテル・メンバー10人が、それぞれ身長や体格が(おそらく体調も)違うのにほぼ同時に症状が現れ、ほぼ同時に倒れこみ、数分の間に全員亡くなっています

cartel-members-2201984 白い矢印が亡くなった10人。黄色の矢印はヒットマンのガフ。彼だけは毒入りテキーラを飲んでいませんが、マイクに絞め殺されました。青い矢印は左からマイク、ガス、ジェシー。

しかし現実的には毒への耐性の個体差があるので、この「全員ほぼ同時に死亡」はどんな毒を持ってしても実現不可能なんじゃないかと思います。

…って言っちゃうとこのページ全くの無駄なんですが、まあ、あくまでフィクションなので、私としては「神経毒が何かの拍子にうまいことキマったんだね!」ということで納得しておこうと思います。何人かは生き残ったりしていたほうがリアルだったかもしれませんが、物語的には計画通り全員死亡!のほうがガスの頭の良さが際立つし、何より単純にカッコいい(って言っていいのか)からだろうなーと思いますが、いかがでしょうか?

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