ウォルターとエリオット、グレッチェンの3人が大学院時代に創設し、のちに大成功した会社グレイマター・テクノロジー。劇中では何故ウォルターがグレイマター社を去ったのかが明確になっていませんでしたが、製作者ヴィンス・ギリガンによると理由は「ウォルターの劣等感」のようです。

グレッチェンは名門で裕福な家の娘だった
グレッチェンを演じたジェシカ・ヘクトは、S2E6「イナイ・イナイ・バァ」のレストランでのシーンを演じる前、ギリガンから「ウォルターとグレッチェンは何故別れたのか」について説明があったとAMCのQ&Aで言っています。
それによると、とても愛し合っていた二人は近いうちに結婚を…と、ニューポートにあるグレッチェンの家に挨拶に訪れたのだそうです(ニューポートは保養地・別荘地として有名で豪邸が多いとか)。ところが、いざ家族に会って初めて、ウォルターは「グレッチェンはとても成功した、裕福な家の出身だったのだ」と気づきます。自分とは全く違う境遇にウォルターは打ちのめされ、その劣等感に耐え切れなくなってしまった。そしてすっかりビビった彼は、その日の夜に文字通りグレッチェンのもとを去ってしまった…ということのようです。
そんなこんなでグレイマター社にも居づらくなり、たったの5000ドルで持ち株を手放して逃げるように会社を辞めてしまったんですね。別にエリオットやグレッチェンに追い出されたわけでも、不当に安い金額で追い払われたわけでもなんでもないのに、ウォルターは「私の研究で帝国を築いた」と恨み節をぶつけていましたが、グレッチェンが呆れていた通り全くの言いがかりだったようです。

このシーンでグレッチェンはウォルターが自宅に来た日のことを「7月4日 週末」と言っていて、グレッチェンにとっても忘れようにも忘れられないほど傷ついた日だったのだとわかります。それなのにウォルター…。
ジェシカさん曰く「ウォルターはその時の劣等感から逃れようとしてグレッチェンに『F**K YOU』と言ったの」。うわぁ…。ウォルター…。
視聴者はグレッチェンとエリオットが悪者だと思っている?
のちにギリガンもインタビューで、ウォルターとグレッチェンたちの間にあったことは、ジェシカさんが答えた通りで間違いないと認めています。
ギリガン曰く、「僕がこの件についてあまりハッキリさせたくなかったせいでもあるんだけど、面白いのは『ブレイキング・バッド』を観た人の多くはグレッチェンとエリオットが悪いヤツらで、ウォルターは彼らにカモにされ不当に扱われたと思ってるらしいこと。僕はそういう風に考えたことはない」とのこと。
ギリガンによれば全てはウォルターの劣等感に根ざしたものだそうで「もしウォルターやグレッチェン、エリオットにバイアスをかけず、この(「イナイ・イナイ・バァ」の)シーンをよく観ればわかると思う」とも言っています。
「ブレイキング・バッド」で脚本を書いていたピーター・グールド氏も「僕が面白いと思うのは何が起こったかじゃなくて、ウォルターがその感情を何年も忘れずにいること。彼は自分自身に対して正しい評価ができない。彼は自分のしてきたことを全て正当化することしか出来ないところまできているんだ」と言っているようです。(ただし、彼は最終話でついに変わったのだとも言っています)。
このギリガン&グールドのインタビューは「ブレイキング・バッド」終了から3年も経った2016年のものですが、記事には70件ものコメントが寄せられていて、「グレッチェンたちが悪いと思ってる人がほんとにいるの?」「観てればわかるよねー」「完全に思った通りで謎でもなんでもないけど…」という人もいれば、「グレッチェンがウォルターに隠れてエリオットと浮気したからだと思ってた」「ウォルターがスカイラーと浮気して子供ができて別れたのかと…」という人も。他にも「みんな同じもの観てるのに違うこと考えてるの面白い」「ピザを屋根に乗せるのに何回撮影したかのほうが気になる(※)」などの反応が寄せられています。
※屋根ピザシーンのトリビアはこちら↓
ウォルターがピザを屋根に投げるシーンは、たった1回の撮影で成功した